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平成10年度事業報告(概要)
出典:大商ニュース 99年8月5日号

●【平成10年度事業報告】「都市格」多彩な活動


 大商は平成10年度、会員の皆様のご協力を得て、(1)企業活力の発揮(2)地域魅力の向上(3)世界各地との連携強化など、「都市格」向上に向けて多彩な事業を展開しました。
 この年、日本経済は2年連続のマイナス成長となり、金融機関の貸し渋りによる企業の資金調達難や倒産、失業者増加などが問題となりました。そこで景気対策や税制・社会保障制度改革、規制緩和、中小企業の貸し渋り対策などを政府に要望。その結果、公共事業・減税など24兆円の緊急経済対策の実施や法人実効税率・所得税率の引き下げが実現したほか、中小企業の金融安定化に向け特別保障制度が創設されました。
 一方、2008年オリンピックの大阪招致については平成10年12月に閣議了解を受け、11年2月に全国組織の「大阪オリンピック招致委員会」が設立されました。
このほか「欧州投資交流ミッション」を派遣し、大阪・関西のPRや外国企業の対日投資促進活動を積極的に実施しました。
 さらに共済事業やPL団体保険制度、所得補償共済制度などの普及、健康開発事業の実施など、会員企業への各種サービス事業の一層の充実に努めました。
 3月の議員総会で、大西正文会頭が退任を表明し、新会頭に田代和氏が選任されました。

◎120周年事業の実施

 創立120周年を迎えた大商は、会員に対してさらなる企業家精神の発揮を呼びかけるとともに、会員企業との交流・連携強化による21世紀への新たな礎の構築を目指し、会員大会を開催。50年以上にわたり継続加入している595会員を「永年会員」として表彰。また今後の大商運営の基本的指針となる『大商宣言』を採択した。創立100周年以後の20年間の歩みを季刊「チェンバー」に掲載した。
 このほか、10年3月に策定した「大商企業家ミュージアム(仮称)基本構想」をもとに、その具体的事業内容の立案・計画作業に着手。同ミュージアムは、大阪を舞台に活躍した企業家たちのチャレンジ精神あふれる事績に関する展示や、若者たちが活躍中の企業家たちとの交流を通じて企業家精神を学ぶ人材開発事業などを行うもので、平成13年春のオープンを目指す。7月に基本計画をとりまとめ、9月に正式名称を「大阪企業家ミュージアム」と決定した。

◎会員サービス事業の充実

 大商事業の内容紹介や、積極的な参画呼びかけ、相互交流を目的に「新入会員の集い」を開催した。
 また所得補償共済の創設や生命共済、特定退職金共済、個人年金共済、PL団体保険、がん保険の制度普及に努め、一層の会員サービス事業充実を図った。さらに、会員交流促進のため、月例会員講演会や会員ゴルフ大会を開催した。このほか、大商の事業活動をタイムリーに広報する「大商ニュース」、ビジネス情報誌「チェンバー」などの刊行物の充実に努めた。

<主なサービス事業>
・国内・海外取引の照会
・各種研修・検定
・技術開発支援
・各種証明発行
・賢島研修センター
・商工図書館サービス
・経営情報処理サービス
・各種共済事業
・PL団体保険制度
・がん保険制度
・健康管理事業
・チェンバーズカード
・チェンバーコンサート
・大商ホームページ
・旅行関連サービス事業

◎企業活力の発揮

【新企業・新産業の創出】
 先進的な技術・製品、アイデアを持つ国内外のベンチャー企業が自社のビジネスプランを発表し、技術・販売・資金などの提携先を求めて商談を行う「グローバル・ベンチャー・フォーラム(GVF)98」を10月22・23日に開催。今回は従来の「アジア太平洋ベンチャー(APV)」をベースに参加対象地域をG8を含む全世界に拡大、国内外34社がビジネスプランを発表した。このほか近畿69の商工会議所
が広域ネットワークを組み、「ベンチャービジネス支援センター」を大商内に設置、32件の相談に応じた。
 また中堅・中小企業の新分野進出や後継者問題を解決するため、平成9年4月にスタートした「非公開企業のM&A市場」では、3件の成約が誕生した。10月からは京都・神戸両商工会議所とも連携し、同市場を共同運営しているほか、平易な解説書「M&Aハンドブック」を発刊した。
 将来性ある福祉産業を振興するため「福祉産業フォーラム・大阪99」を3月に実施したほか、情報提供・意見交換の場として「福祉ビジネス懇談会」を開催した。

【環境問題への対応】
 中堅・中小企業が国際規格「ISO14001」の認証取得を支援するため、「環境マネジメントセミナー」を開催。また廃プラスチックのリサイクルシステムについて研究し、検討結果を報告書にまとめた。さらに米国へ環境サマースクールを派遣し、先進的な環境ビジネスを視察した。

【製造業の活性化】
 大学研究室と中小企業との交流を図るための「カレッジフェア98」を9月に開催。研究成果や産官学の交流事例などを紹介した。また中堅・中小企業と技術系学生との交流を目指す「ロボリンピア98」を10月に実施し、学生102チーム・530人が手作りロボットの技を競った。

【流通業活性化と情報化の促進】
 5月に成立した街づくり関連三法を受け、研究会を設置。関連三法の活用策を検討し、その結果を手引書として取りまとめたほか、九条地域商店街での市場振興モデル事業実施や物流セミナーを開催した。
 デザイン・ファッションの振興に向けて「第2回アジア・ファッション・フォーラム」「大阪コレクション」「トータルファッションフェア98」を実施した。
 企業の情報化支援については、流通業のためのネットワークサービス「大商VAN」の利用普及に努めたほか、近畿全体での情報発信機能拡充を目指し「近畿商工会議所連合会インターネット研究会」を設置、事業化への検討を行った。また「マルチメディア産業振興のためのバーチャル・インキュベータ事業」を開始。セミナーを開き、中小企業にマルチメディア活用の需要を喚起させるとともに、中小企業とクリエーターのマッチングを行った。このほか2月には「第2回マルチメディアコンテンツOSAKAフェスティバル」を開催した。

【人材の確保・育成】
 4・6・9月に中小企業の採用活動を支援する「大商就職フェア」を開催。のべ243社が参加し、約4,500人の学生が来場した。11月には会員事業主から推薦のあった従業員425人を「優良商工従業員」として表彰したほか、能力開発・人材育成に関する各種講座を実施した。

【小規模企業の振興】
 小規模企業に対し、金融・税務・経営などの経営指導や経営改善講習会などを実施したほか、10月には「中小企業のための官公需・金融フェア」を実施した。また11月には「いきいきおおさか・中小企業フェスタ98」を開催。ユニークな商品・サービスを開発した83社が参加。商談件数は982件に上った。

◎主要事項

◆4月
・大商就職フェア99開催(6、9月にも開催)
・豪州経済使節団派遣
・賢島研修センターの利用者30万人突破

◆5月
・環瀬戸内圏財界セミナー・神戸会議開催
・留学生と企業の交流サロン開催

◆6月
・欧州投資交流ミッション派遣
・極東ロシア経済調査団派遣

◆7月
・所得補償共済制度創設
・人材情報交流会開催(11月にも開催)
・大阪企業家ミュージアム基本計画策定
・ふろ〜むOSAKAグリーティングカード作成

◆8月
・第38回名京阪神四商工会議所中小企業懇談会開催
・与謝野通産相との懇談会開催
・大商M&A市場で成約第一号誕生
・環境サマースクール実施

◆9月
・ネパール商業会議所と提携
・大商婦人会創立40周年記念事業実施
・会員ゴルフ大会開催
・ダイナミック・アジアの開催協力
・カナダ経済使節団派遣、第3回関西/西部カナダビジネスフォーラム開催
・カレッジフェア98開催
・なにわデジタル経営セミナー開催

◆10月
・京商・神商とM&A市場の共同運営開始
・創立120周年会員大会開催
・中小企業のための官公需・金融フェア開催
・ロボリンピア98開催
・G−BOC98開催
・関西/北西イングランド・ビジネスフォーラム98開催
・GVF98開催
・インド・ベンガル商工会議所と提携
・大西会頭が任期満了でCACCI会長退任

◆11月
・中小企業海外PL保険制度の取り扱い開始
・小渕首相、堺屋経企庁長官との懇談会開催
・いきいきおおさか・中小企業フェスタ98開催
・中小企業危機突破大阪大会開催
・大阪の森づくり記念植樹式と記念碑除幕式開催
・優良商工従業員表彰式開催
・第2回アジア・ファッション・フォーラム開催
・大商首脳が複数の銀行トップと個別懇談、貸し渋り解消訴え
・速水日銀総裁との懇談会開催

◆12月
・中南米経済使節団派遣
・ビジネス実務法務検定試験開始
・2008年五輪の大阪招致に関する閣議了解
・緑化貢献者表彰式開催

◆1月
・「平成10年度大阪の標準者モデル賃金」発表
・首都機能移転「中央地域」候補地説明会開催

◆2月
・99大阪商工名鑑刊行
・大阪オリンピック招致委員会設立
・新入会員の集い開催

◆3月
・福祉産業フォーラム・大阪99開催
・中央地域への首都機能移転を目指す近畿・東海商工会議所会頭会議開催
・大西正文会頭退任し、田代和氏が新会頭に就任

◎政策提言と要望活動

【景気対策で意見】
 景気回復と構造改革の促進に向け、7月に発足した小渕新内閣に対し、景気対策や税制改革、中小企業対策、規制緩和などを要望した。大阪府商工会議所連合会などが11月に開催した中小企業危機突破大会に協力し、中小企業金融の拡充などの決議を建議。その結果、公共事業・減税など24兆円の緊急経済対策が決定されたほか、法人実効税率の引き下げ、外形標準課税の回避などが実現した。

【貸し渋り対策】
 金融機関が自己資本比率の維持・向上を図るため貸出先を選別、融資を圧縮したことから「貸し渋り」が発生し、銀行融資に頼ってきた中小企業が資金繰りに窮する事態に陥った。そこで年末資金の手当てが心配される11〜12月に、大西会頭ら大商首脳陣が金融機関トップと直接懇談し、中小企業への円滑な資金供給を要請した。また3月には、貸し渋り対策として一定の効果をあげている特別保証制度について、保証枠拡大、期限延長、基金積み増しなどを盛り込んだ「中小企業信用補完制度の拡充に関する要望」を全国に先駆けて建議。この結果、11年度の追加景気対策として信
用保証枠が10兆円拡大されることになった。

<主な要望活動>
5月
・倒産法制の見直しに関する意見要望
6月
・中小企業対策に関する要望
7月
・年金改革に関する意見要望
・小渕新内閣への要望
9月
・税制改正に関する要望
11月
・「商品券構想に対する反対意見」建議
12月
・都市型社会資本整備に関する要望
1月
・中小企業信用補完制度の拡充に関する要望


◎地域魅力の向上

【観光の振興】
 観光産業の振興へ向けて前年度策定した「観光振興アクション・プログラム」に基づき、大阪の歴史文化や観光名所の写真を用いたグリーティングカードの作成・販売や、産業観光推進のための見学先データベースづくり、大阪の隠れた街の魅力を再発見する「まち歩きツアー」を実施した。
 また大阪の食の魅力を全国にPRし、集客産業の振興を図るため「食都大阪98味の競宴」を開催した。

【大阪五輪の招致】
 2008年五輪の大阪招致に向けて6月、日商議員総会で大阪招致に関する決議を満場一致で採択し、政府などに要望した。その結果、12月に閣議了解を得て、2月に五輪招致の全国組織「大阪オリンピック招致委員会」が設立された。

【交流拡大の基盤づくり】
 関西国際空港の2007年完成を目指す二期事業着工に向けて関係省庁に要望活動を行ったほか、二期事業に関する民間出資を募集、企業の幅広い協力で目標額を達成し、3月末には工事認可の申請を行った。
 大阪国際会議場の建設・運営支援に関する経済界の募金は目標額の15億円に到達。12年春にオープニング事業を実施することになった。また、環瀬戸内圏の地場産業PRと圏域の観光振興促進のため、九月の「アジア中小企業見本市」に出展した。

【大阪の景観向上とイメージアップ】
 4年度からスタートした「大阪の森」づくり事業は、7年間で1億1,300万円以上の募金が集まり、11月に扇町公園で記念植樹式と記念碑除幕式を行ったほか、緑化貢献者への表彰や緑の募金活動を実施した。
 企業連合組織「アメニティ・ソサエティ」の活動充実と発展・拡大を目指し、組織間交流団体「アメニティ・ソサエティ活動連絡協議会」設立に取り組んだ。
 11月から「交通環境対策キャンペーン」を開始。迷惑駐車防止や交通安全の徹底を呼びかけ、交通環境対策に関するよろず相談室を設けた。
 このほか、9年度にまとめた「大都市・大阪のリノベーション推進に関する調査研究報告『戦略編』」を踏まえ、個性豊かな大阪の実現へ向け具体策を検討した。その結果を同研究報告『実践編』に取りまとめ、「都市型社会資本整備に関する要望」を建議した。

【文化の振興】
 8月に恒例のチェンバーコンサートを開催するとともに、大阪の5つのクラシック・コンサートホールの月間演奏プログラム「OSAKAクラシック・コンサートマンスリーガイド」を発刊。観光案内所や主要ホテルなどに配備した。


2003.4.1更新
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